サバのアート•コレクティブ、パンクロック・スゥラップの木版画が東京の観衆たちと出会うとき。

新宿のInfoShop IRAで開かれているマレーシアの版画コレクティブの展覧会「パンクロック・スゥラップ(Pangrok Sulap)版画ポスター展」(11月8日まで)に関して、マレーシアの地元からこの展覧会について取材した記事があったので翻訳してみた。訳は意訳なので、もし間違いや訂正があればご指摘お願いします。

Source: The Star Online Sabah-based art collective finds audience in Tokyo」by daryl goh

東京の展覧会に出品されたパンクロック•スゥラップの最近の木版画作品。サバ州コタキナバル近郊の小さな村のコミュニティの一つ、ウルパパールの先住民ドゥスンの人々の苦難についての作品。

東京の展覧会に出品されたパンクロック•スゥラップの最近の木版画作品。サバ州コタキナバル近郊の小さな村のコミュニティの一つ、ウルパパールの先住民ドゥスンの人々の苦難についての作品。

サバ州のアート•アクティビストコレクティブ、パンクロック・スゥラップ(Pangrok Sulap)の木版画作品が東京の人々に支持を得ている。サバ州を中心に活動しているアート•アクティビストコレクティブ、パンクロック・スゥラップは、国境を越えてパンクを志向する仲間たちの心を惹き付けつつあるのだ。
アートと社会的アクションが結びついたこの共同体のDIY的美学の多くは、木版画、ポスターそして横断幕という形で表現されている。彼らの作品は現在、東京のクリエイティブスペース、Irregular Rhythm Asylumで展示されている。東京外国語大学講師で文筆家の徳永理彩さんは、過去2年間に制作されたパンクロック・スゥラップの木版画作品20点を収集している。「Pangrok」はパンク•ロック、そして「sulap」は農家の休憩小屋を意味している。
徳永さんは昨年末、東南アジアにおけるDIYアートシーンの調査の中でパンクロック・スゥラップの作品と出会った。今年はリサーチと研究旅行ですでに三度、このキナバル山の麓にある山岳地帯ラナウをベースに活動するコレクティブに訪問している。
東京外国語大学講師/文筆家の徳永理彩さん(右)は、今回東京でのパンクロック•スゥラップの木版画の展覧会をキュレーションした。本展覧会はこのサバのアートコレクティブがラナウの小さな町で活動を開始した2010年以降、初めての海外での展覧会となる。

東京外国語大学講師/文筆家徳永理彩さん(右)は、今回東京でのパンクロック•スゥラップの木版画の展覧会をキュレーションした。本展覧会はこのサバのアートコレクティブがラナウの小さな町で活動を開始した2010年以降、初めての海外での展覧会となる。

徳永さんは、メールインタビューでこのように述べている。「今日本では、東南アジア(特にインドネシア、マレーシア)のDIYアートやアンダーグランウドコミュニティへの関心が高まっています。権利の拡充、教育、周縁化されたコミィニティの発言権といった諸テーマは本質的な普遍性を持っていて、それ故にパンクロック・スゥラップの作品は言語の壁を越えて、幅広く観る人たちの心に響くのです。」
パンクロック・スゥラップの中心メンバーは、ジェロームマンジャット(Jerome Manjat)、リゾ レオン(Rizo Leong)や、マクフエディ(McFeddy)といったアーティスト、デザイナーであるが、誰がメンバーであるかについてゆるやかな共同体は、サバの小さな町での支援プログラムへの援助も行っている。徳永さんは東京での展示のために、彼らの共同作品や(アートやショートフィルムを通じて)その背後にあるプロセスそのものを記録していった。
「わたしが試みているのは、パンクロック・スゥラップ自身の持つテーマを日本の人たちに向けて翻訳し、明確に伝えていくことです。彼らの共同作品は、クアラルンプールや東京に住む人たちが耳を傾けるべき類いのものだと思います。そこがサバであれ沖縄であれ、社会的に周縁化されてきたコミュニティの闘争に、私たちは目を向けて行く必要があるのです。」と彼女は付け加えている。
サバの地元の人々にとってキナバル登山は高価で手が出ないことや、巨大ダムプロジェクトによって複数のコミュニティが消滅の危機にあること、ICプロジェクトや文化の喪失、違法タバコ業者が手巻きタバコ売りを追いやっていること、カアマタン祭り、ボルネオビーズといった話題と、彼ら/彼女らの作品がどのように繋がっているのか、そして、なぜ団結の<ことば>がパンクロック・スゥラップのミッションにとって中心的な意味を占めているのかを知ることは、日本の観客にとって刺激的な経験となるはずだ。
別のインタビューでは、パンクロック・スゥラップのリゾ•レオンはこう語っている。「私たちはこれまで、ラナウの外部の誰かが自分達の活動について興味を持ってくれるとは想像だにしませんでした。マレーシアの外で私たちの作品を支援してくれる人たちと出会うことは素晴らしいことです。私たち自身はこれからも続いていく闘争そのものであり、私たちの芸術はサバの地方の生活やそこで周縁に置かれた人々について語り続けていくでしょう。それらは決して忘れ去られたり、無視されたりしてはならないのです。」